働き蜂より大きい雄蜂(Drone)

養蜂のほうほう

オスの蜂はまるで「寅さん」

 

僕らが子どものころ、盆と正月には山田洋次監督の映画『男はつらいよ』が上映されてました。
そこに登場する通称「寅さん」といえば、人並みに働くことはせずに家に帰ってきてはひと騒動おこす面倒なおじさん。でも義理と人情には厚いというキャラクター。
演じていた渥美清さんが亡くなってシリーズは終わってしまいましたが、いまだにファンも多くて東京の葛飾区には「寅さん記念館」がリニューアルオープンしています。

そんな寅さん風情が(部分的に)オスのミツバチに重なる。

 

雄蜂(オスバチ)のイメージ


雄蜂のイメージとしては見ているとだいたいこんな感じ。

  • 巣内をのらりくらりしていて働かないので、英語では「drone(怠け者)」などと呼ばれている。
  • ずんぐりむっくりしていて煤けた見てくれと、そのふてぶてしさが寅さんぽい。
  • 体がデカいためか、はちみつなどのエサを多く消費しがち。などなど…。

雄蜂はさなぎのうちから大きくて、下の画像にある赤丸部分の盛り上がった部分がオスのさなぎのいる巣房。ほかの蓋のかかった働き蜂の巣房よりもかなり大きい。
このように子どものうちから図体がデカい。

雄蜂と働き蜂の巣房の大きさの違い

 

雄蜂の本当の役割とは?


そんなフーテン的な雄蜂ですが、さらに悪いことに働くこともできなければ自力でエサを食べることもできないので、働き蜂が口うつしでエサを与えます。
彼らに与えられた使命は『遺伝子を残す』ためのみ。

といっても、同じ巣から生まれる女王蜂と巣内で交尾するのではなく、別の群れの女王と巣外で出会って空中で交尾します。
これは近親交配をさけて、より強い系統の群れを作るための工夫です。

交尾が成功すると、働き蜂が毒針をひと刺ししたときとおなじように、生殖器がちぎれて死に絶えます。

使命を果たせなかった雄蜂はひょっこりと巣に居座りますが、やがて働き蜂に巣から追い出されます。
寅さんはある日とつぜん自分から旅にでますが、雄蜂は外に放り出される。
蜂の世界は映画よりも切実です。

 

群れの危機に託される、最後の使命


そうはいっても致命的な危機のときには、雄蜂にはさらに重要なロール(役割)がまわってきます。

女王蜂が突然いなくなり、新たな女王蜂も育成ができなくなってしまったようなとき、働き蜂はみずから無精卵で孵る雄蜂を産みはじめます。
この段になると、雄蜂しか孵らなくなるために群れは崩壊の道へ。
つまり働き蜂たちは群れが終わりに近いことを察知し、遺伝子を残すことにのみ行動をシフトするのです。

このとき重要な最後の任務を与えられるのが雄蜂なのです。
群れの遺伝子をつなげることを、雄蜂に期待して。
ラストでほっこりする「寅さん」シリーズの映画と異なり、とつぜん悲劇のストーリー展開です。

 

養蜂の衛生管理に役立つ雄蜂


とにかく交尾以外はなにもしない雄蜂ですが、養蜂においては病気の管理にとても役に立っていることがあります。

さまざまな病気を媒介するダニがミツバチに寄生して、ときに巣を全滅させることがあります。
ダニが卵を産みつけるのは巣房にフタをされる直前で、働き蜂よりも雄蜂への寄生割合が高い。そのため雄蜂だけの巣房がある巣枠をもうけて、羽化するまえに一気に削り取ることでダニの駆除を行うことができます。

もしくは上の画像のように明らかに巣房のフタの大きさが異なるので、大きいフタのものを間引いてやることでも、事前に対策ができます。

養蜂の管理上、かわいそうではありますが巣全体をまもる意味ではとても役に立っているのです。

 

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